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「剣道とじいちゃん」

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福島県郡山市
郡山名武館
中学一年生
安齋克行
「やった、金だ。」と思わず心の中でさけんでいました。僕にとってはずっしりと重いメダルです。「市民体育祭で金メダルをとれるように頑張ること」今年一月に亡くなったおじいちゃんとの約束でした。
試合に出ても勝てないし、友達はいい線までいくし、僕はもう剣道をやめたいと、じいちゃんの家へ遊びに行ったとき話しました。そんな僕の気持を変えたのがじいちゃんでした。じいちゃんは、ゲートボールをしていました。写真とかメダルをみせてくれましたが金メダルはありませんでした。「何だじいちゃん、銀メダルじやないか。」と僕はいってしまいました。そして悪いことを言ったなあと後悔しました。金メダルをとることがどんなに大変なことか僕は身にしみてわかっていたからです。
「克行、じいちゃんは金メダルを取れるようにがんばるから、お前もがんばれ。」と、なぐさめてくれました。
それからのじいちゃんはいつ遊びに行ってもゲートボールの練習に行っていませんでした。暑い日も練習に行っているというので僕と母はそおっと見に行ったことがありました。じいちゃんは一生懸命練習をしているので、僕は涙があふれそうになってしまいました。そして、とうとう優勝して大きいトロフィーと金メダルを見せてくれました。「やったねじいちゃん。」僕はすごいと思うようになりその日から「よし、みんなに負けないように頑張るぞ。」という気持に変わりました。
気持が変わると剣道も楽しくなってきたような気がしました。そしてじいちゃんと話をするのがすごく楽しくなり前よりも遊びに行くことが多くなりました。小さい時は普通のじいちゃんと思っていましたが、大きくなり話が出来るようになるとたのもしいじいちゃんに思えてきました。
家のそばに畑があり、良く畑仕事をしていました。野菜の種類、木や虫の名前も沢山おしえてくれました。花も沢山植えてあり、きれいな花が咲くとわざわざ鉢に植えて持ってきてくれたりしました。男なのに花が好きだなんて変なじいちゃんだと思っていだけれど、本当に気持のやさしい人なのだと思いました。そして何でも一生懸命やるじいちゃんに見えました。口ぐせは「いつも一生懸命」です。最初は又はじまったと思っていやでしたが、だんだん意味がわかるようになってくるととても良い言葉だと思うようになって好きになってきました。僕もしっかり練習してじいちゃんのように金メダルをとろうと思いました。
そしてついに、六年生の時初めて優勝し、トロフィーと金メダルをもらうことが出来た時は「この次はいよいよ市民体育祭の金メダルだね、がんばれ。」といってはげましてくれました。このころじいちゃんは、だんだん体の具合が悪くなってきていました。そしてとうとう亡くなってしまいました。
中学一年になり、少しヤル気をなくし金メダルは半分あきらめていました。でもじいちゃんのことを思い、一生懸命練習し

 

 

 

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